★祝島の屋号についての調査協力のお願い


 祝島ネット21の歴史研究グループが祝島の屋号についての調査を進めています。以下は現時点での調査情報です。まだまだ分からない部分も多いので、屋号についての情報をお持ちの方はぜひ情報をお寄せください。確実な情報でなくても、聞いたことがある話程度でも結構です。よろしくお願いします。

 屋号についての情報がありましたら、祝島ネット21事務局までお寄せください。

1.居住場所にちなんだ屋号

イワミヤ 岩見屋 島の江戸期の島名をそのまま屋号としている。どの家の屋号だったかわからない。
イワキヤ 岩城屋 「岩木屋」とする文献もあった。屋号の語形から「岩見屋」の分家と思えるが岩見屋がどの家であるかわからないので、その関係も不明である。
ミナトヤ 湊屋  
イソヤ 磯屋  
ハマヤ 濱屋 江戸後期の庄屋。現在は旅館である。
ハマダヤ 濱田屋 回漕業を営み、かつ大きな魚問屋であった家。その先先代ごろの家長は大阪方面に押し船で魚を商った利け者だった。
イソノウエ 磯の上 「湊屋」の分家だという。「ジンベー」というシコナで呼ばれることもある。
ハナサキヤ 岬崎屋 海に突き出た位置にあった家であろうか。現在は他出。
ツキダシヤ 築出屋 海に突き出た位置にあった家であろうか。現在はない。
カドヤ 角屋 角地にあった家。
クボヤ 久保屋 窪地にあった家であろう。姓も久保であり、久保姓は何軒もあるので本家は「ホンクボ」と呼ばれている。
ダケ 高い所にある家。古くからの家で以前は漁業(たこくり)をしていたという。屋号の漢字は石山但信の「周防祝島方言」「天文地理の部」にこの漢字があてられている。


2.住居の状況を言う屋号

ナカヤ 中屋 一族の家が並んでいる、その中央にあった家を言ったと思われる。
ナカモトヤ 中元屋 中屋とは姓も異なり関係はなさそうである。三浦によい土地をもっていた家だという。
イタヤ 板屋 諸地にある屋号で旧家である。草葺き屋根が一般の頃に板屋根の家であったか。あるいは板を扱う職業の家だったかもしれない。
クラ 「アタラシヤ」の蔵を購入して住居とした家。


3.目標物を言う屋号

カワモトヤ 川本屋 共同井戸のそばの家。「川」は井戸をいう方言である。
カワサキヤ 川崎屋 共同井戸と関係のある屋号かもしれない。
カワシタ 川下 共同井戸の下の家。これは姓だろうと言う説もあった。石丸左馬頭の邸を買って建てた家だという。
ヤクシヤ 薬師屋 薬師堂の近くの家。東薬師、西薬師、中薬師と三軒ある東薬師が本家である。本家は三浦三軒の一家である。
フダバヤ 札場屋 高札場近くの家。どの家の屋号かは明らかで無い。


4.旧国名・都市名町村名を言う屋号

ツノクニヤ 津国屋 摂津国との関係は不明。嘉名として名乗ったのであろうか。
オーサカヤ 大阪屋 終戦後、大阪屋と看板を上げて衣類などを商っていた家。この家の世帯主は祝島の女性を妻とした大阪の人であった。
アカシヤ 明石屋  
イマズヤ 今津屋  
ショウドシマ 小豆島 当主の祖父が小豆島からきた人で、島の人々はこう呼んだという。
トモヤ 鞆屋 福山市の鞆から来住した家。この屋号は今も人々の口にのぼる。
ヤナイヤ 柳井屋  
イヅモヤ 出雲屋  
サエキヤ 佐伯屋  
ムロツヤ 室津屋  
ソメイヤ 染井屋  
カヨイヤ 通屋  
オーボシヤ 大星屋  
チクゼンヤ 筑前屋  
カワタナヤ 川棚屋  
ブンゴヤ 豊後屋 豊後から来島した家。蛸くり漁をしていた家。
クマヤ 熊屋 熊本から漁に来てそのままここに落着いた家。
サツマヤ 薩摩屋 出身が薩摩かどうかは不明。生簀を持っていた大きな魚問屋であった。


5.嘉名を言う屋号

ツルヤ 鶴屋  
カメヤ 亀屋  
ツルシマヤ 鶴島屋  
ウメヤ 梅屋  
マツヤ 松屋 本家株の一家である。
フジヤ 藤屋 以前は大洋漁業と張合うほど大きな漁業者であった家。回漕業であったという人もいる。現在は他出。
ハナヤ 花屋 諸地にあるが命名事情は不明。
エベスヤ 蛭子屋 福神を家の名に言ったもの。蛭子社が近かったとも考えられる。(祠が祭ってあった)
エベスヤ 戎屋 現在島には「恵比寿」姓、「蛭子」姓の家はともに数軒あるが、「戎」姓の家はない。
エベスヤ 恵比寿屋  
ダイコクヤ 大黒屋 江戸時代は回漕業で大石丸という船を持っていた。現在の姓は「大石」である。
スミヨシヤ 住吉屋 住吉の神をまつった家であろう。八島にもあった屋号である。
ホーライヤ 蓬莱屋 「宝来屋」と記したものもあった。魚屋であった。
タワラヤ 俵屋 東浜にある家。「俵」は豊作のシンボルであろうか。年寄りは祭りの際に門に下げた提灯の「俵屋」の文字を記憶している。
タワラヤ 田原屋 「広島田原屋」といっていたかもしれない。
マスヤ 桝屋 大家であったと人々は記憶している。
ツチヤ 槌谷 農家。弘化二年(1845)に瓦屋根の家を建てたと伝えられる。祝島では最初の瓦屋根の家であったという。
コバンヤ 小判屋 富のシンボルであろうか。
カネヤ 金屋 嘉名ではなく、実際に金融業を営んでいたか。不詳。
イマガネヤ 今金屋 「金屋」の分家であろうか。不詳。
シラカネヤ 白金屋 「金屋」「今金屋」と関連する名のようにみえるが関係は不詳。
タフクヤ 多福屋  
フクシマヤ 福島屋  
ダイダイヤ 代々屋 三浦三軒といわれている家の一家である。家が代々続くようにと屋号に託している。
ニシキヤ 錦屋  
トラヤ 登良屋 家運の隆盛を願っての当て字であろう。
アズマヤ 東屋 島の東部の家。「アズマヤ」は稚号的である。
アズマヤ 阿妻屋 以前は回漕業。現在は旅館(?)。「東屋」と「阿妻屋」は同姓である。本家と分家が同一屋号を名乗って文字を替えたのであろうか。


6.分家称を言う屋号

アタラシヤ 新し屋 石丸左馬頭の一族であるという。以前は鰯網の網元であった。
オキノヘヤ 沖の平屋 沖に住居を構えた分家。「島屋」の分家と言う説と、こちらが本家と言う説がある。
ハシノヘヤ 端の平屋 中郷の端にある家である。先祖は光明寺から養子に来たらしい。


7.「姓+屋」「姓の一字+屋」の形式の屋号

イシハラヤ 石原屋  
イヅミヤ 泉屋  
エモトヤ 江本屋  
ウエダヤ 上田屋  
オーエヤ 大江屋  
オーサキヤ 大崎屋  
オリイヤ 折井屋  
コガワヤ 小川屋  
サカヤ 坂屋  
シゲムラヤ 重村屋  
シゲヤ 繁屋  
セキヤ 関屋  
タケモリヤ 竹森屋  
タルヤ 樽屋  
タチバナヤ 立花屋  
タナカヤ 田中屋  
ツボミヤ 坪見屋  
トクナガヤ 徳永屋  
ナカムラヤ 中村屋  
ナダヨシヤ 灘吉屋  
ハシモトヤ 橋本屋  
フクダヤ 福田屋  
マツモトヤ 松本屋  
マルヤ 丸屋  
ミクニヤ 三国屋  
ミョウデンヤ 名田屋  
モリシゲヤ 森重屋  
モリヤ 守屋  
ヤマモトヤ 山本屋  
ヤマサキヤ 山崎屋  
ヤマネヤ 山根屋  
ヤマダヤ 山田屋  
ヤマカワヤ 山川屋  
ワキタヤ 脇田屋  


8.役職・生業関係の屋号

カギヤ 鍵屋 上納米の蔵の鍵を預かっていた家か。庄屋であったという。
ゼニヤ 銭屋 一般には銭貸の両替をおこなった店をいう。土地を多く所有していたという。
コメヤ 米屋 上納米を管理していた家か。庄屋であったという。
シオタヤ 塩田屋 塩を売っていた家。現在もその業である。
サカナヤ 魚屋 魚を営なんでいたのであろう。
カミヤ 紙屋 「紙屋」も諸地で聞く屋号で、旧家であることが多いがこの家が販売していたかどうかはわからない。
カジヤ 鍛冶屋 「注進案」に「鍛冶屋」一軒とある。
コーヤ 紅屋 「兄部」(コーベ)姓の家であるという。兄部姓は間物商の姓である。
コーヤ 幸屋 「紅屋」「向屋」とは別姓である。
コーヤ 向屋 向井姓の家。
ワタヤ 綿屋 この家も「綿村」姓である。
ワタヤ 和堂屋 「綿屋」とは本家分家の関係である。
フロヤ 風呂屋 銭湯であった家。水の乏しい島だったので水道が引かれるまでは、自家に風呂がある家はまれであった。
チャヤ 茶屋  
オケヤ 桶屋 桶製造の家。先代の名「清」と合わせて「オケシェー」とも呼んでいたという。
ゲタヤ 下駄屋 下駄屋を営んでいた家。
デンザイヤ ぜんざい屋 「ぜんざい屋」を営んでいたのは、昭和の始めまで。ただしこのシコナは今も人々の口にのぼる。
ヨロズヤ 萬屋 一般に日常雑貨を商う店をいうが 祝島のこの屋号の意味は不詳。大島から持ってきた屋号だろうという。


9.命名の事情未詳の屋号

シマヤ 嶋屋 一家の嶋屋は三浦三軒の一家であるから「嶋屋」は島の始祖の意味かもしれない。処置で聞く屋号である。
ムラヤ 村屋 諸地で聞く屋号であるが意味未詳。
ウオキヤ 魚木屋 「魚屋」の分家か。
オーノヤ 大野屋  
オーミヤ 大見屋  
オグラヤ 小倉屋 「コクラヤかもしれない。」
カワラヤ 加原屋 「川原屋」であろうか。「カワラ」は「川」「溝」の意味か。
キリヤ 霧屋 屋号としては特異である。
  細屋 「網屋」の誤記か。
シカマツヤ 鹿松屋 「鹿」の読み不詳。
スミヤ 住屋  
ドテヤ 土手屋 意味不詳。現在は「ドテヘーサー」と呼ばれることが多い。
トミナガヤ 留永屋 意味不詳。上関から島に移り住んだという。
トメオカヤ 留岡屋 意味不詳。
ナダヤ 灘屋  
ヒノヤ 日野屋  
ヒラキヤ 平木屋  
ヒラタヤ 平多屋  
ツネミヤ 常見屋  
ヒロヤ 広屋  
フノヤ 符野屋 命名の拠るところは不詳。室積の符野屋は祝島出身と聞いている。


※出展:山口県史編纂室「山口県 家名・屋号調査報告書」より